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高根鉱山のウラン鉱床 [鉱物 (村上市・高根鉱山)]

昨年5月11日に高根鉱山の記事をアップしました。
そこでは2つ確認されている坑口のうち、坑口Bを取り上げましたが、やはり一度は坑口Aへ行ってみたい。
昭和52年3月版の新潟県地質図説明書から、高根鉱山について述べてある部分を抜粋します。
「斑状花崗岩中のペグマタイト晶洞及びアプライト中の細脈中に、輝水鉛鉱を伴う鉱床である。鉄マンガン重石も伴う。昭和18年に開発された。」
この本では高根鉱山のウラン鉱床に付いては触れられていませんが、”新潟県高根鉱山の含ウラン・モリブデン鉱床”のまえがきに、「昭和35年10月下旬、新潟県岩船郡朝日村高根部落周辺のウラン探査を行った際、高根鉱山のモリブデン鉱床の一部にウランが伴われることが確認された。」とあります。
この文献に2つの坑口、坑口Aと坑口Bが出てくるのですが、当ブログでもその用語を使用することにします。
去る5月13日と14日、2日連続で高根鉱山を訪れました。
というのも、初日は坑口Aを発見できなかったためです。
結局二日目も発見には至らなかったのですが、両日共一つずつ露天掘り跡を見つけることができました。

takane_map.jpg

下半分が13日の行動範囲で、上半分が14日のそれです。
黄色の線は2回の調査から想像される、当時の鉱山道のルートです(繰り返しますが、あくまで推定です)。
坑口Bの位置は省略してあります。
同様に、13日に見つけた露天掘り跡の位置は、ウェイポイントを登録し忘れたので地図には載っていません。
ゴチャゴチャと赤線が密集している部分の右岸にあるのですが。

まずは13日の記録から。

IMG_0310.jpg

林道から対岸へ渡るのにとても苦労しました。
昨年下見して、ザイル無しで河原へ降りられそうなポイントから最初降下を試みたのですが、思った以上に水量がありかつ流れが早かったため渡れませんでした。
で、改めて降下地点を探し、ザイルを使って降下。
崖の左側にぶら下がっているのがザイルです。
どうにかこうにか対岸へ渡ってみると、岩場の縁に摩耗した階段のような跡がうっすらと見られました。
そこから河岸段丘に上がり、上流を目指します。

IMG_0289.jpg

ゆったり拡がっている河岸段丘には、踏み跡があるようなないような・・・
そうこうしているうちに、石垣があるのを発見(上の写真)。
周囲の地形を精査したところ、この真下の岩場にネットで見覚えのある露天掘り跡の岩場を発見。
しかしどこもかしこも絶壁で、ぱっと見。降りられそうな感じが全然しない・・・

IMG_0294.jpg

この岩場の前に降りるのは、今年一番の難易度でした。
ザイルは最初の場所にフィックスしてあるので、もうザイルには頼れません。
横幅7~8mあるでしょうか、圧倒的な威圧感。

IMG_0296.jpg

内部の画像。
ここでガイガーカウンターを取り出してみると、金丸鉱山手前のウラン鉱床露頭と同程度の数値を示すではありませんか。

IMG_0297.jpg

今回も一応UVライトを持ってきたのであちこち照射してみたのですが、長波の紫外線ライトに反応する岩はありませんでした。

IMG_0303.jpg

この露天掘り跡がちょうど坑口Bの正面に位置するはずなのですが、肝心の坑口Aが見当たりません。
もっと上流へ行くとそれらしい等高線が現れるのでそこかなと思いますが、最初の渡渉でおへその辺りまで水に浸かってしまい、疲労が激しかったので無理せず撤退することにしました。
帰りに枝沢へ立ち寄り、ペグマタイトの露頭でも出てこないかなと思って少し遡行したのですが、すぐに雪渓が出てきました(地図a)。

次に14日の記録から。
文献の位置関係とはズレますが、等高線の状況からこの谷だろうと思える場所へ一直線。
ところが、ここも対岸へ渡る手頃な場所がないんです。
昨日の場所以上に左岸は絶壁続き。
それでもピンポイントで降下地点を見つけ出し、今回もザイルの力を借りて河原へ降りました。
そして、渡渉の過程で見つけた露天掘り跡らしい岩場へ。

IMG_0332.jpg

奥行きはなさそうです。

IMG_0328.jpg

内部。
ここでガイガーカウンターを取り出してみたのですが、昨日の場所以上に高い数値を示しました。
これはすごい。

IMG_0331.jpg

おおむね0.45~0.5の間を行ったり来たり。
やはりUVライトに反応する岩はなかったですが、疑似蛍光はかなり見られました。
ほどなく坑口A探しを再開したのですが、意外と地形が複雑で、GPS機器がなかったらどこを歩いているのか把握できなかったかもしれません。

IMG_0334.jpg

そして、やっと坑口Aが待ち構えていそうな沢に遭遇。
おそらくこの沢の上部左岸に穴があるはず。

IMG_0337.jpg

ところが、それらしい穴が見えてきません。
左岸は途中から絶壁に近くなり、なおかつ木もたくさん生えているので、余程大きな坑口でないと視認できないかも。
かなり沢の上の方まで上がり、すると昨日同様雪渓が出てきたので(上の写真・b地点)、ここでUターン。
河床まで降らず、ある程度尾根の上を歩きながら対岸を注視したのですが、あるサイトに載っている、対岸から見た坑口Aの写真と同じ風景が全く見つからないので、今回もあきらめました。
対岸の尾根の右側から回り込めば多少は斜度が緩いので、なんとか坑口探しをすることができるかもしれませんが、どうも深追いする気分になれなかったのでおとなしく帰途についた次第。
高根川のもっと上流には高根金山跡があるし、高根の山は深いですね(しみじみ)。












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高根鉱山訪問 [鉱物 (村上市・高根鉱山)]

新潟県北部には金山がたくさんあります。
中でも代表格は、朝日スーパーライン沿いの鳴海金山。
近くには猿田金山があり、高根川上流には近年まで砂金を採っていた高根金山があります。
ここで話がややこしくなるのですが、旧朝日村高根管内にはもう一つ、輝水鉛鉱(=モリブデン)を採掘していた高根鉱山もあるのです。
今回紹介するのはこの高根鉱山。
比較的アクセスが良く、坑道も短いため見学に際して危険はありません。
ここの鉱床は、斑状花崗岩中のペグマタイト晶洞、及びアプライトの細脈中に輝水鉛鉱を伴います(時に鉄マンガン重石も)。
操業開始は昭和18年(1943)。終戦時まで稼行していたようです。
もう一つこの鉱山の知名度を押し上げたのは、昭和35年11月にこの鉱山及びその周辺で行われたウラン探査です。
昔も今も、新潟県内には稼行されたウラン鉱床はありません。
しかしながら、幾つかの地域で放射能異常を示す部分があり、探鉱が行われたことはあります。
具体的に高根鉱山以外の名前を挙げると、関川村中束(なかまるけ)、新発田市上赤谷炭鉱、旧三川村吉ヶ沢、旧中条町半山などです。
中でも最も有望視されたのは、関川村の中束。
昭和35年から数年に渡って、現在の動力炉核燃料事業団の前身である原子燃料公社により探鉱が行われました。
さて高根鉱山には坑口が2つ残っており、川を挟んで対岸の山腹にある坑口Aの東側の壁面で初めてウランを含む鉱物が発見されたのです。
花崗岩中の小断層に沿う黒色粘土脈で、0.10~0.15mr/hの放射能が検出されました。

IMG_2972.jpg

坑口Bの入り口。

IMG_2899.jpg

坑口Aは高根川を挟んで中央の山腹にあるはずですが、既に新緑が生い茂り、こちら側からでは坑口の存在を確認することはできませんでした。
高根川は深いゴルジュが連続しており、一見向こう側に渡るのは到底不可能。
それでも坑口Bの前後100mの間に、何とかザイルを使わなくても河原へ降りられそうなところを見つけました。
しかし、今回は軽装で来たので坑口Aの探検はまたいつかということで・・・

IMG_2908p.jpg

壁面はよく見ると複数の地質が入り混じっており、写真の石英や斜長石を見分けることができました。

IMG_2902.jpg

坑道内(短いけど)の平均的風景です。
ウランを含む鉱物といえば燐灰ウラン石。
この鉱物は蛍光するので、念の為持っていった紫外線ライト(365nm)で壁面を照らしてみると・・・

IMG_2916.jpg

何箇所かで青白く蛍光する部分がありました。
正体はわからないけど、これはすごい。
でも、手持ち撮影ではまともに撮れないので、いったん三脚を取りに車まで戻りました。

IMG_2957_58p.jpg

三脚使って撮影再開。
燐灰ウラン石は長波で緑に蛍光します。
残念ながら緑色に光る部分はなかったけど、やはり幾つかの部分が蛍光するのです。
これは黄色に蛍光(黄色の蛍光は少数派)。

IMG_2968p.jpg

Beforeです(ストロボ使用)。

IMG_2970_71p.jpg

Afterです(つまり紫外線ライト照射中)。
あまりに美しい色合いだったので、車まで三脚を取りにいったん戻り、三脚を使って撮影。

IMG_2961p.jpg

中央下部の、最も蛍光度合いが強かった部分をクローズアップしてみました。
蛍光部分の鉱物の正体は・・・調べたけどわかりません。

IMG_2981.jpg

坑口Bの近くの風景。
ここ2ヶ月間、いろんな沢と山を歩いてきましたが、間違いなくTOP3に入る幽玄な風景。
いつかこの沢も歩いてみたい。





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