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能化山鉱山の坑口発見 [鉱物 (村上市・能化山鉱山)]

14日、三度目の正直でようやく能化山鉱山(or 共立鉱山) の坑口を発見しました。
予兆はあったんです。
人工的に積まれた石垣が早速出てきましたから。

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驚くべきことに、この坑口まで細々と踏み跡が残っていました。
季節柄ヤブは一切なかったので見通しもよく、探検気分はMAXに。

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入り口からやや下ると水平坑道に出ます。
まずは左の分岐を覗いてみます。

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すぐ閉塞していました。
この坑道の壁面の地質はアプライトでしょうか。
文献通りですね。

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坑道をまっすぐ行くと、ひときわ大きな坑道に合流しました。
半分水没しており、水深は50cm前後でしょうか。部分的にはもっとあるかも。
外気温3度の状況で太ももまで濡らすことはできないので、今回はここまで。
そして、右側に視線を転じると外の光が差し込んでいるのが見えました。
どうやらそちら側にも坑口があるようです。

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ありました。
それがこの坑口。
さっきの坑口より一回り大きい堂々たる風格。

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これで坑口は終わりかなと思いましたが、沢沿いの踏み跡はなんとなくまだ続いているようでしたので、さらなる上流を目指しました。
すると、このようなゴルジュが待ち受けており、それがしばらく続きました。
素晴らしい景観です。

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河原の小石たち。
各種花崗岩が見られます。
この地域の代表格の黒雲母花崗岩をはじめ、優白質色花崗岩、アプライトなども。

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そして、またまた見つけてしまいました。
これも間口が大きな坑口です。

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入ってみると天井の高さもあり、整然とした空間でした。
まるで間瀬石を切り出していた坑道みたい。
おお、床に動物の白骨が横たわっています。

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カモシカでしょうか?
確かにこの空間は野生動物には格好のねぐらですね。

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やはりアプライト質の地質メインでした。
後方にはズリの小山が出来上がっていたけど、ほじくれば何らかの鉱石が出てきそうな雰囲気でした。

葡萄山地には無名ながらもたくさんの鉱山がありました。
大府鉱山、笹川鉱山、葡萄鉱山、脇川鉱山、重石鉱山、高倉鉱山、鷺沢鉱山、鍋倉鉱山、能化山鉱山、共立鉱山、塩野町鉱山、板屋越鉱山などなど。
このうち最も規模の大きかったのが鍋倉鉱山ですが、意外と詳しく書かれた文献がありません。
他の鉱山も推して知るべし。
さて、共立鉱山 or 能化山鉱山とあやふやな書き方にした理由を詳述します。
実は午前中にこの記事をアップした際は能化山鉱山の坑口発見というタイトルでした。
しかしながら15日の午後に新たな文献に出会い、これが共立鉱山の鉱山の坑口である可能性も出てきたのです。
なので、加筆修正することに。
とはいえ、まだまだ情報不足であり、鉱山名の特定は不可。
なので、両方の鉱山の沿革を簡単に述べることにします。

①能化山鉱山
大正時代に稼行されたと言われるが、大正元年~9年の鉱業統計には記載がなく、あくまで口伝によるものである。その後、文献に出てくるのは1940年。この年(昭和15年)に再開されたという記録があるが、いつ閉山したかは不明。
斑状花崗岩を貫くアプライト質花崗岩中の石英脈。
脈幅10cm、グライゼン化を盤際に伴う。
鉱脈は輝水鉛鉱が主で、少量の黄鉄鉱、鉄マンガン重石を伴う。

②共立鉱山
昭和19年(1944)、モリブデン粗鋼18t、銅精鉱(10%)を出荷との記述があるだけで、やはりいつまで操業していたのかは不明。
鉱床の状況は明らかでないが、幅1~1.5mの鉱脈があったと報告されている。
鉱石は輝水鉛鉱、黄銅鉱など。

手元に”1:200,000地質図 村上”があります。
ここに2箇所の鉱山マークが記載されており、海に近い方にCu(銅)、その右側にはMo(モリブデン)と書かれています。
学者が書いた文献にも大雑把な地図は載っているのですが、こちらも縮尺は似たりよったり。
そこでの能化山鉱山の印が付いている場所と見比べてみると、Cuと書かれたところは能化山鉱山っぽい。
しかし、曲がりなりにも黄銅鉱が採れたという記述があるのは共立鉱山の方。
また、今回ぼくが見つけた坑道はいずれも幅も高さもあり、坑道のスケールから言うと脈幅1~1.5mあったと言われる共立鉱山の方がマッチします。
いずれにせよ、能化山山麓に位置する鉱山であり、広義の能化山鉱床を採掘した鉱山と言えますから、能化山鉱山でよいのでは?と思いますが。

※参考文献:
「羽越地域の花崗岩類と鉱化作用」石原・佐々木・寺島(1983)
「羽越地域の花崗岩体に伴う鉱床群におけるビスマス鉱物相と花崗岩系列との対応関係」五十公野裕也 (2016)
「日本鉱産誌 B 第1-b」(1956)
「広域調査報告書 昭和56年度 羽越地域(Ⅰ) 」通商産業省資源エネルギー省(1982)












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