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鉱山野郎の宴の跡 [鉱物 (村上市・能化山鉱山)]

世の中の絶滅危惧種に”山師”や”鉱山野郎”という人種がいます。
最近、彼らのDNAを引き継ぐ若手の学者と知り合いましたが、期を同じくして東北の鉱山野郎とぼくが勝手に思っているKさんから連絡があり、新しくHPを作ったという報告をもらいました。

https://stampmichi.sakura.ne.jp/kouzanyougo.htm

早速見てみると、いや、これは素晴らしい!
ますます”鉱山愛”が深まりました。
ぼくも鉱山野郎の末席に名を連ねたくなってきました。

さて、前回の続きです。

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入ってすぐ、3本の坑道が枝分かれしている広場に出たのですが、そこに釣り用のスピニングリールが2個と釣り竿が転がっていました。
ぼくも小学5年生の頃から海釣りを始めたので、リールの年代はだいたいわかります。
これは昭和40年代のものではないでしょうか。
日本海が近いとはいえ、歩けば40分はかかるし、だいたいなぜこの洞窟に釣り竿を持ち込まなければならなかったのか?
釣った魚を道具と一緒にそのまま持ち込み、酒宴を開いたとしか思えません。

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その近くには多くの酒瓶が転がっていました。
お世辞にもマナーがいいとは言えません。
しかも、この坑道は意外と長く、枝坑道も多数あるのですが、あっちこっちでこのような酒瓶が転がっておりました。
でも、なんかユーモラスと言うか、ネガティブな感じはそれほど受けなかったです。
単に性格が豪快なだけだったのかもしれない。

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鉱山の遺構も幾つか見られました。
こちらは丸太ハシゴ。

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一部石英脈が露出しており、よく目を凝らすと微量のモリブデンとタングステンが見られました。

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とある枝坑道の先に光る眼が・・・
帰宅してから写した写真をフォトショで思い切り明るくしてみたら、この動物がハクビシンであることがわかりました。
新発田の三光石鉱山のホールにもハクビシンの大家族が暮らしているのを見たことがありますが、彼らの繁殖力は強いようです。

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どの枝坑道も道幅は結構あるのですが、少し進むとこのように土砂の流入と自然崩落によって高さが低くなっていました。
そして、ここにも謎の酒瓶が2本。

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主坑道と思われる坑道を行くと、天井の高さが3mはありそうな空間に出ました。
これはすごい・・・

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どのくらい進んだでしょうか。
行く手を水深20~30cmくらいの滞水が阻んでいます。
その先の小山の向こうに視線をやると、なんとなく広い空間が拡がっていそうな気配。

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結構水温はぬるかったので、思い切って正面突破しました。
小山を超えると期待していたホールはなく、さらに坑道が伸びており、再び途中から滞水しているのでした。
今度は水が濁っているので正確な水深はわかりませんが、かなり深そうなのでここで撤退。

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あちこちで水没しかけた坑道を見かけました。
主坑道の奥に出てきたそれ以外は水が澄んでいて、夏になったらシュノーケリングしたいぐらい。
当時からこんなきれいな水が坑内で得られていたのなら、坑内で魚を焼いたり、ちょっとしたツマミを調理したりしていたかもしれません。
酒瓶の数から想像するに、ここで頻繁に酒宴が繰り広げられていたことは確かなようです。






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能化山鉱山の本丸へ [鉱物 (村上市・能化山鉱山)]

ある専門家の方の助言を受けて、再び能化山鉱山(村上市)へ足を運びました。
これから紹介する坑口群は間違いなく能化山鉱山に属するものであることは明らか。
しかし、引き続きぼくが1月15日の記事に書いた坑口は共立鉱山のものなのか、それとも能化山鉱山の一部なのかは不明。
新たな文献が見つからない限り、永遠の謎となるでしょう(大袈裟か)。

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この滝の高巻きは厳しかったです。
この後、もう一つ高巻く必要のある滝が現れたけど、それは難なくパス。
しかし予想以上に本格的なゴルジュ地帯が続き、緊張の強いられる場面もありました。

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いつものことですが、初めて坑口を発見した時は飛び上がりたくなるほど嬉しいものです。
今回も心の中でガッツポーズ。

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20~30cmほど滞水しているでしょうか。
でも、その先はそれほど水深はないようで、坑道はかなり長そうです。
冬でなければ入っていきたいところですが、さすがに自重。

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別な坑口内部。
こちらも入ってすぐ滞水していますが、その先は大丈夫そうです。

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別な坑口。
扇形に拡がる大斜面の下から順に坑口を探していきます。
下から見ると、坑口のありそうな地形がわかります。
おおむね予想した場所に坑口が現れるので、探検冥利に尽きるというか、嬉しいものです。

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上の坑口内部。
上部の坑口は滞水があまり見られなくなりましたが、それなりに崩落しており、なかなか奥へ進めません。
しかし、最後に現れた坑口でサプライズが待っていました(続く)。

Special thanks to Y san.






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能化山鉱山の坑口発見 [鉱物 (村上市・能化山鉱山)]

14日、三度目の正直でようやく能化山鉱山(or 共立鉱山) の坑口を発見しました。
予兆はあったんです。
人工的に積まれた石垣が早速出てきましたから。

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驚くべきことに、この坑口まで細々と踏み跡が残っていました。
季節柄ヤブは一切なかったので見通しもよく、探検気分はMAXに。

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入り口からやや下ると水平坑道に出ます。
まずは左の分岐を覗いてみます。

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すぐ閉塞していました。
この坑道の壁面の地質はアプライトでしょうか。
文献通りですね。

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坑道をまっすぐ行くと、ひときわ大きな坑道に合流しました。
半分水没しており、水深は50cm前後でしょうか。部分的にはもっとあるかも。
外気温3度の状況で太ももまで濡らすことはできないので、今回はここまで。
そして、右側に視線を転じると外の光が差し込んでいるのが見えました。
どうやらそちら側にも坑口があるようです。

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ありました。
それがこの坑口。
さっきの坑口より一回り大きい堂々たる風格。

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これで坑口は終わりかなと思いましたが、沢沿いの踏み跡はなんとなくまだ続いているようでしたので、さらなる上流を目指しました。
すると、このようなゴルジュが待ち受けており、それがしばらく続きました。
素晴らしい景観です。

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河原の小石たち。
各種花崗岩が見られます。
この地域の代表格の黒雲母花崗岩をはじめ、優白質色花崗岩、アプライトなども。

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そして、またまた見つけてしまいました。
これも間口が大きな坑口です。

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入ってみると天井の高さもあり、整然とした空間でした。
まるで間瀬石を切り出していた坑道みたい。
おお、床に動物の白骨が横たわっています。

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カモシカでしょうか?
確かにこの空間は野生動物には格好のねぐらですね。

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やはりアプライト質の地質メインでした。
後方にはズリの小山が出来上がっていたけど、ほじくれば何らかの鉱石が出てきそうな雰囲気でした。

葡萄山地には無名ながらもたくさんの鉱山がありました。
大府鉱山、笹川鉱山、葡萄鉱山、脇川鉱山、重石鉱山、高倉鉱山、鷺沢鉱山、鍋倉鉱山、能化山鉱山、共立鉱山、塩野町鉱山、板屋越鉱山などなど。
このうち最も規模の大きかったのが鍋倉鉱山ですが、意外と詳しく書かれた文献がありません。
他の鉱山も推して知るべし。
さて、共立鉱山 or 能化山鉱山とあやふやな書き方にした理由を詳述します。
実は午前中にこの記事をアップした際は能化山鉱山の坑口発見というタイトルでした。
しかしながら15日の午後に新たな文献に出会い、これが共立鉱山の鉱山の坑口である可能性も出てきたのです。
なので、加筆修正することに。
とはいえ、まだまだ情報不足であり、鉱山名の特定は不可。
なので、両方の鉱山の沿革を簡単に述べることにします。

①能化山鉱山
大正時代に稼行されたと言われるが、大正元年~9年の鉱業統計には記載がなく、あくまで口伝によるものである。その後、文献に出てくるのは1940年。この年(昭和15年)に再開されたという記録があるが、いつ閉山したかは不明。
斑状花崗岩を貫くアプライト質花崗岩中の石英脈。
脈幅10cm、グライゼン化を盤際に伴う。
鉱脈は輝水鉛鉱が主で、少量の黄鉄鉱、鉄マンガン重石を伴う。

②共立鉱山
昭和19年(1944)、モリブデン粗鋼18t、銅精鉱(10%)を出荷との記述があるだけで、やはりいつまで操業していたのかは不明。
鉱床の状況は明らかでないが、幅1~1.5mの鉱脈があったと報告されている。
鉱石は輝水鉛鉱、黄銅鉱など。

手元に”1:200,000地質図 村上”があります。
ここに2箇所の鉱山マークが記載されており、海に近い方にCu(銅)、その右側にはMo(モリブデン)と書かれています。
学者が書いた文献にも大雑把な地図は載っているのですが、こちらも縮尺は似たりよったり。
そこでの能化山鉱山の印が付いている場所と見比べてみると、Cuと書かれたところは能化山鉱山っぽい。
しかし、曲がりなりにも黄銅鉱が採れたという記述があるのは共立鉱山の方。
また、今回ぼくが見つけた坑道はいずれも幅も高さもあり、坑道のスケールから言うと脈幅1~1.5mあったと言われる共立鉱山の方がマッチします。
いずれにせよ、能化山山麓に位置する鉱山であり、広義の能化山鉱床を採掘した鉱山と言えますから、能化山鉱山でよいのでは?と思いますが。

※参考文献:
「羽越地域の花崗岩類と鉱化作用」石原・佐々木・寺島(1983)
「羽越地域の花崗岩体に伴う鉱床群におけるビスマス鉱物相と花崗岩系列との対応関係」五十公野裕也 (2016)
「日本鉱産誌 B 第1-b」(1956)
「広域調査報告書 昭和56年度 羽越地域(Ⅰ) 」通商産業省資源エネルギー省(1982)












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