SSブログ
鉱物(阿賀町・幸地蔵鉱山) ブログトップ

変わり果てた赤石沢 [鉱物(阿賀町・幸地蔵鉱山)]

中ノ沢川の支流に幸地蔵沢という沢があります。
その上流は赤石沢といい、昔は露天掘りで黒鉱や閃亜鉛鉱、銀などを採掘していたとのこと。
もっとも、このことに言及している文献は「日本金山誌」だけで、郷土史にも一切名前は出てきません。
2022年10月、入手したばかりの日本金山誌の記述を手がかりに、初めて赤石沢を目指しました。

IMG_9771.jpg

在りし日の赤石沢(といっても、わずか1年前ですが)。
全体的にボサがひどく、ヤブっぽい区間が長いのですが、赤石(赤玉、レッドジャスパー)の露頭は見事なものでした。

IMG_9776.jpg

このような80cm前後の赤石を3個くらい見かけた思います。
なぜ日本金山誌に、赤石露頭のことが載っているのか?
それは、次の文章を読むと明らかになります。

「・・・黒鉱露頭は赤石沢の左岸の山腹に、黒鉱質鉱石の大塊としてみられる。(中略)石英、重晶石を主とし、これに少量の絹雲母、緑泥石を伴い、方鉛鉱、黄鉄鉱と微量の閃亜鉛鉱が鉱染したもので、品位はAg 500~800g/tを示す。赤石露頭は黒鉱露頭の300m上流の左岸にあり、延長3.5m、高さ1.8mの露出である。沢底にも赤石の露出がある。この赤石の一部には石英の網状脈が走り、方鉛鉱などを伴う。そのような部分、及び赤石の上盤の青緑色粘土に銀が含まれており、Ag 60g/tから、最高400g/tを示した。」

2年振りに訪れた赤石沢ですが、荒涼とした山肌が目の前に拡がっていました。

IMG_2612.jpg

野球場2つ分くらいの面積がきれいに伐採されてしまったのです。
実はこの日、赤石沢を訪れる前にやや下流部を流れる枝沢に入ってみたのですが、そこも上流部がこのような荒れ果てた光景となっており、新たな林道も作られていました。
現地に立っていた標識を読むと、(61~72)年生スギの皆伐ということのようです。
対象となる区域を示す地図も書いてありましたが、これは広い・・・
近年ただでさえ豪雨の傾向が高まっているのに、保水力を減ずるような大規模な皆伐はいかがなものか。

IMG_2610.jpg

林道や新たに造成された伐採道のあちこちに、このように切り出された材木が山積みされていました。

IMG_2619.jpg

さて、気を取り直して赤石沢が流れていたと思われる谷間を探ってみました。
大きな切り株や枝が、無造作に捨てられており、沢の転石が見えない区間が8割を占めます。
もはや沢という体をなしておらず、小さな谷間でしかない。
しかし、かろうじてまだ大きな赤石は残っていました。
2枚目に掲げた赤石はもう少し上流にあったと思うのだけど、そこまで歩いていく気力も意欲もなく・・・
正面に写っている80cmほどの赤石ですが、表面は砂埃を被ってひどいものですが、下半分は本来の美しさを保っていました。

IMG_2624.jpg

おお、これぞ赤石、レッドジャスパー!

IMG_2621.jpg

その近くで地面から掘り出した、30cmほどのツヤッツヤのレッドジャスパー。
この白っぽい網状の石英脈にも、高純度の銀(Ag)が含まれているのでしょうか?
沢の転石が見えているところであれば、まだまだ赤石は容易に見つけることができます。
しかし、ここから20mほど沢を登ってみたけど、とにかく倒木がひどく、歩くのが非常にやっかい。
この沢は死にました。

IMG_2585.jpg

下流部は幸地蔵沢と呼ぶのですが、この辺りは伐採工事の影響を受けておらず、昔ながらの穏やかな渓相が続きます。
この辺でも赤石は見られ、それほど大きなものはないですが、小さなものならすぐ見つかります。

IMG_2593.jpg

IMG_2594.jpg

改めて思ったのですが、上流部も中流部も赤石の質の高さはほとんど変わらず、天下一品かと。

IMG_2601.JPG

幸地蔵沢から南西に分岐する沢(ナカダイラ沢)にも入ってみましたが、途中でやはり広範囲に渡って伐採工事が進行中であり、沢が大小の倒木で埋もれていたので、ここで引き返しました。
ちなみに、なぜかこの沢へ入ると赤石は全く見られなくなりました。






共通テーマ:趣味・カルチャー

幸地蔵鉱山についての一考察 [鉱物(阿賀町・幸地蔵鉱山)]

幸地蔵鉱山(=西沢鉱山)について言及しているのは、新潟県の鉱物ファンの間で有名な某HPだけでした。
そこに、中ノ沢鉱山の南西の方角に西沢鉱山があり、鉛・亜鉛の露天掘りが行われたという記述がありました。
その情報を頼りに2年がかりで探し当てた(と思われた)西沢鉱山跡ですが、今年入手した日本金山誌に正確な場所の地図が載っており、ぼくが見つけたと思っていた場所は別な場所だったことがわかっため、先月当時の記事は削除しました。
つい先日、日本金山誌に書かれている場所を再訪(実は2年前に一度その沢を訪れていた)、そこに書かれている黒鉱露頭と赤石露頭を確認。
しかしながら思ったより小規模だったのと、改めてぼくがおととし見つけた場所の位置関係を考え合わせると、両者は非常に近いですし、ぼくが見つけた場所にも明確な人工的遺物が残っているので、こちらも幸地蔵鉱山に含まれるのではないかと思い至りました。
従って、改めて西沢鉱山の新旧両方の場所の紹介をしてみようと思います。

IMG_9771.jpg

まず、こちらが日本金山誌に書かれている沢です。
ここは比較的ヤブが薄めですが、ところどころボサが覆い被さっており、あまり快適な沢歩きというわけにはいきませんでした。

IMG_9765.jpg

林道から入渓してすぐ、赤石(もしくはレッドジャスパー、赤い碧玉、赤玉)が河原に転がっていました。
もっとも、この沢の隣の沢でも多くの赤石は見られるので、特に感動はないのですが。

IMG_9769.jpg

黄色い碧玉も見られました。
これは部分的に黄色になっているだけですが、もっと大きな、完璧な黄玉もありました。

IMG_9773.jpg

黒鉱露頭ですが、それらしい地形を2箇所見つけましたが、草に覆われているので下からでは黒鉱を視認できませんでした。
日本金山誌から抜粋します。「・・・赤石露頭は黒鉱露頭の300m上流の左岸にあり、延長約3.5m、高さ1.8mの露出である。沢床にも赤石の露出がある。」
上の写真は、記述にある沢床に露出している赤石。
黒鉱露頭疑惑の地形を2箇所見ていますが、その最初に現れる場所を起点にすると、たしかに300mほどでこの場所に出ます。

IMG_9772.jpg

横幅1m弱の大きな赤石。

IMG_9777.jpg

部分的に石英の網状脈が走っていますが、これも日本金山誌の記述通り。
日本金山誌によると、この部分、及び赤石上盤の青緑色粘土に銀が含まれており、Ag 60g/tから最高400g/tを示したとのこと。
ちなみに、黒鉱露頭の鉱石はさらに高い銀の品位を示し、Ag 500~800g/tを示したとあります。
これはすごいと思います。
しかし、銀の採取はシロートには無理。
脳内妄想で我慢することにします。

さて、ぼくが最初に辛地蔵鉱山跡ではないかと思った場所ですが、そこはもっとスケールが大きく、今でも黒鉱と思われる黒い鉱石がゴロゴロしています。

IMG_6925.jpg

Y岳西麓を流れる沢沿いに2箇所、写真のような石垣を発見しました。
石垣だけでなく、西斜面の上の方には石英を採掘したと思われる跡が複数箇所見つかります。
おそらく石英脈に付随する金を採取していたのでしょう。

IMG_6931.jpg

沢を詰めていくと、現頭部でいきなり広大な露天掘り跡と思わしき地形が現れます。

IMG_6933.jpg

天然自然の崖崩れ跡という見方もできますが、この沢の途中まで踏み跡が残っているので、どちらかというと露天掘り跡だと思うのですが・・・

IMG_6934.jpg

辺りは黒鉱っぽい石だらけ。
幸地蔵鉱山の黒鉱の特徴が日本金山誌に書いてあるのですが、抜粋すると「黝灰色細粒鉱物の集合からなる堅硬、緻密、塊状の鉱石で石英・重晶石を酒とし、これに少量の絹雲母・緑泥石を伴いうんぬん・・・」とあります。

IMG_7004.jpg

まさにその通りの外見ですし、念のため鉱物のベテラン諸氏にぼくが拾ってきた鉱石を観てもらったところ、断定はできないけど黒鉱かもしれないね、との言質を頂きました。
ということで、日本金山誌にはこの沢より北に位置する沢の露頭を幸地蔵鉱山と称していますが、このエリアもそこに含まれるのではないかというのがぼくの意見です。

※補足:ひょっとしたら、この沢はもろにY岳の西麓を流れているので、文字通り西沢と呼び、こちらの露天掘り跡を西沢鉱山と呼称していたのかもしれません。つまり幸地蔵鉱山と西沢鉱山は別であると。今となっては検証のしようもありませんが。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
鉱物(阿賀町・幸地蔵鉱山) ブログトップ