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大谷沢、鍵取、そして楢山・・・ [鉱物 (阿賀町)]

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上の図は「蛍石及蛍石鉱床」門田重行著(S18年刊)のものです。
蛍石鉱床といえば五十島蛍石鉱山が有名ですが、阿賀町には他にも2箇所、蛍石を採掘していた場所があったのです。
ひとつは鍋倉山(1107m)北部、谷沢川源頭の鍋倉鉱床、もうひとつは早出川支流、容ヶ谷沢源頭部の室谷鉱床。
どちらも思い切り秘境に位置し、日帰りは不可能。
しかも五十島鉱山同様、一帯はヤマビルの生息地ですから、沢登り&登山のエキスパートでなおかつ度胸がないと行くことができません。
さて上褐の本によると、鍋倉鉱床の露頭は標高750m付近にあり、そこから鍋倉山のすぐ南の小ピーク・大峰(929m)まで人力で運び、そこから麓の選鉱場まで空中索道で鉱石を運搬した、とあります。
選鉱場がどこにあったのかは書いてありませんが、地理的に鍵取集落付近にあったと考えるのが妥当かと思います。
鍵取集落は令和2年現在4戸しか住宅がありませんが、昔は一段低い河岸段丘に集落があり、19戸ほど住宅が建っていました(S32年当時)。
グーグルアースで見ると、当時の地形が手にとるようにわかります。
しかしながら、それでも選鉱場がどこにあったのかは空中写真からはわかりません。
取りあえず、鈎取集落脇を流れる大谷沢を詰めていけばヒントが掴めるかもと思い、大谷沢の河原へ行ってみました。

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左岸に小道があり、簡単に河原へ降り立つことができました。
結局、新大谷沢橋直下から500mほど遡行したのですが、渓相は終始こんな感じで非常に歩きやすかったです。
途中400m地点まで左岸に踏み跡が残っていましたが、その先はヤブに埋もれていました。
鍋倉鉱床の地質ですが、くだんの本によると上部古生層と花崗岩から構成され、古生層は主に珪岩、結晶質石灰岩、粘板岩、角岩、硬砂岩からなる。
確かに河原は粒が大きめの花崗岩が多かったです。
あと、結晶質石灰岩と石灰岩も普通に見られました。

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非常に結晶が大きい(最大1cmほど)結晶質石灰岩があったので、写真を撮ってみました。
なにげにポケットにUVライトを忍ばせ、これは?と思う石を見かけたらライトを当ててみようと思っていたのですが、残念ながら蛍石っぽい石は見かけず。
こちらは鍋倉山の南斜面ですから、なくて当たり前なんですが。
鍋倉鉱床も室谷鉱床も坑道掘りはしておらず、もっぱら露頭から採掘していたようです。
例の文献によると、鍋倉の蛍石は石灰岩中に交代鉱床をなすことが多いとの由。
蛍石は大塊状をなして不規則に存在するが、石灰岩中の割れ目や裂け目を充填する細長い網状脈として存在することもある(後者のタイプの原石を今年の春、五十母川の上流で見つけました)。
鍋倉の蛍石は、普通白色ないしは淡青色をしており、透明度の高いものが多く、品質は極めて優良であるとのこと。
う~ん、非常にそそられるのですが、今回は初見なので適当なところで引き返した次第。

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あるサイトに、鍵取分校跡推定地の写真が載っていたので、その場所へ来てみました。
かなり広範囲に渡って盛り土がされており、おそらくはこれらの土砂は外部から持ち込まれたものではなくネイティブ産だろうから、ここの石ころをざっと検分してみました。

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ほどなく、こんな岩石(80cm四方)を発見。
拡大します。

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蛋白石や玉髄が見られました。
表面を研磨すれば、水石や庭石にいいかもしれません。
残念ながらここでも蛍石は見つけることができなかったですが。

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最後に立ち寄ったのが、蛋白石で知られる楢山。
約1年半ぶりの訪問です。
災害復旧工事で林道が橋を渡ったところから通行止めになっていたので、広場に車を停め、そこからハイキング。
昨年は見かけなかった、玉髄の球果を含む手頃なサイズの真珠岩が結構林道脇に転がっていました。
時間がなかったので割ってみたのは1個だけ。それが上の写真。
現地でちょこっと水を付けてから撮影しました。
やはり水で濡らすと美しさが倍増しますね。
サイズも小さいし、色もこの地では一般的な灰色だけど、周辺部が黄色味がかっているのがいい。

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林道歩きを早めに切り上げ、近くの山中の岩場を探検。
岩場の取り付きまで傾斜は割と緩やかだったので危険はありませんでした。
岩壁に沿って30mほどトラバースしてみたけれど、落ち葉の堆積が厚く、また岩の下部はびっしりと苔に覆われており、クラックの有無がわかりません。
右奥にもさらに大きな岩場を見つけたので、今度じっくり水晶(=玉髄&蛋白石)探しをしてみたいと思います。


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